現代アジア経済論A シラバス
馬場敏幸
a.
全体のテーマ :アジアは「奇跡」とまでいわれた高度経済成長を成し遂げ世界の優等生になった。経済発展を望む世界中の国・地域が多く失敗していった中で、なぜアジアには「奇跡」が起こったのだろうか?その後アジアは一転して「アジア通貨危機」に見舞われ世界の劣等生になってしまった。なぜこうした急激な変化が起こったのだろうか。そして今後、アジアはどこへ向かっていくのだろうか。現代アジア経済論Aではこうした点について、韓国、台湾、シンガポール、香港(現香港特別行政区)などNIESと呼ばれる国々を中心に講義を進める。まずは、NIES各国がどのような国か、どのような発展パターンを経てきたのかイメージしてもらいたい。そしてその後、NIESが世界の中でどのような存在なのか、これまでの学問的アプローチなどの知識も習得してもらいたい。最終目的としては、アジアの人たちとかかわりを持ったとき、相手を深く理解し、真のパートナーとなれるよう、その基礎知識を習得してもらいたい。
b.テキスト・参考図書
テキスト:授業内で別途指示
参考図書(あいうえお順):絵所秀紀『開発の政治経済学』日本論評社、末廣昭著『キャッチアップ型工業化論−アジア経済の奇跡と展望−』名古屋大学出版会、世界銀行 白鳥ら訳『東アジアの奇跡:経済成長と政府の役割』東洋経済新報社、原洋之介著『現代アジア経済論』岩波書店、平川・石川編『新・東アジア経済論 :グローバル化と模索する東アジア』ミネルヴァ書房 ほか
c.評価方法とその基準:テストによる評価が中心
d.講義計画(進展状況などに応じ、講義の順番の前後もありうる)
T.アジアの地勢的理解とアジアで戦後急成長したNIESについて
1
アジア経済へのアプローチとアジア経済史の骨格
2
アジア経済の経歴(海洋アジアを中心に前近代から20世紀前半まで)
3
アジアで戦後急成長した国々:NIESの初期の発展とその戦略
4
日本が果たした役割と国際分業の進展
5
アジアの貿易構造の変化(日本からの輸入急増)・国際下請けと地場産業
6
アジア通貨危機のNIESへの影響:被害の大きかった国と小さかった国
U.アジア経済の学問的アプローチより
7
アジアはいつまでたっても発展しない?
8
初期の途上国工業化理論:どうすれば発展しない国を発展させられる?
9
途上国の人たちはなまけもの?それとも実は合理的?
10
輸出はいいことだ? 輸出してもダメなんだ?
11
再考、途上国が発展するためには?
(予備:後発国モデル、雁行形態論、プロダクトサイクル論、国の競争優位、キャッチアップ型工業化モデル、アジアの様々な産業、技術移転とイノベーションの役割、経済成長と環境破壊、社会構造、貧困、宗教、ジェンダー、文明論からみたアジア など)