● 小島 菜穂 ●―混在する国・キューバ―

私はあの3週間、それはそれは必死に生きていた気がする。

ICAPでは、馬鹿でかい今にも死にそうな鶏の鳴き声のテープで目を覚まし、毎日同じサルサを聞きながら歯を磨き、まだ暗い朝6時に朝食を食べに食堂に並ぶ生活が続いた。(今日の仕事はなんだろう・・少しでも日陰でやれる仕事がいいなあ)と考えながらパンを流し込み、ゆっくりする間もなくドロドロの靴を履き、汗臭いズボンを履いて朝礼に出る。(なんでヨーロッパ人はみんなこんなに元気なんだ!?ゆうべはあんなに遅くまで飲んで歌って踊っていたくせに!!)と、軽い憤りを感じながら、スペイン語と英語と日本語とフランス語をぼんやり聞く。それにしても蚊に刺された跡がかゆい。死にそうにかゆい。女の子たちはみんな必死に虫除けスプレーを吹き付けている。最初はオシャレ心のようなものもあった女の子たちが、だんだんと、いかにして蚊と日光から身を守るかに専念してきているのが、かわいらしかった。
(やった、今日はまたオレンジ畑だ。木に隠れて仕事ができるぞ。)そう思うと、農場へ向かう足取りも幾分軽やかだ。朝日がまぶしい。朝はまだ涼しいので、ほとんど汗をかかずにオレンジ畑へ着ける。眼前に広がる、ありったけの緑が心地よい。まるでサバンナである。行ったことないけど。
オレンジ畑には蚊が大量にいる。たちの悪い蟻もうじゃうじゃいる。かまれるとめちゃんこ痛い。みまちゃんやヒデキは何度もひどい目に遭っていて、かわいそうだった。
さてさて仕事を始めてみると、うちの部屋のアイドルこと石川嬢の手さばきが見事である。聞けば、造園の勉強をしたことがあるという。剣道部時代は腹筋が割れていたらしいし、かわいい顔してかなりのやり手であることが判明した。
やり手といえばよこっちである。奴は相当のテクニックスだ。キンカンを瓶ごと持ってきているし、薬の所持量がハンパないし、疲れ知らずだし、ふとした発言がキューティーハニーなのだ。これはハバナへ行ってからの話だが、よこっちのワンピース姿は最高にかわいかった。恥ずかしそうに、でもうれしそうに、鏡の前でジッパーをあげるよこっちは、きらきらと輝いていた。
輝いていたといえば、帰りの飛行機の中で完全なメイクをほどこし、成田空港では瞳をうるうるにじませて、「もうすぐ彼に会えるのね」とつぶやいていた林である。旅行中、彼女は何度愛にくじけそうになっていたことか。「彼が電話に出てくれないの・・!」悲痛な叫びが私たちの心を打った。しかしあのメイクは、やりすぎである。たーくんだってビビっていたではないか。

話をもとに戻そう。
とにかくそうしてなんとか農業の時間が終わる。体中、汗と泥まみれだ。シャワーが浴びたい。しかしそんな時に限って水が止まっていたりする。悲劇だ。もう食べるしかない。必死に食堂に並び、ヨーロッパ人と会話する。これも必死。中にはアメリカ人もいる。トルコ、ギリシャ、アメリカ、スペイン、イタリア、イングランド人、などなど。片言の英語と笑顔でごまかしながら、必死に食事。そして昼寝。これも必死。寝なきゃ体がもたないのだ。午後はまたむつかしい会議なのである。
そんなわけで私の一日は必死に過ぎていく。起きて食べて働いて食べて寝て会議に出て、たまに眠って食べて呑む。
そんな中、ほんの2、3分交わした両親の声がとても心に響いた。その日は夕焼けがとても綺麗で、思わずほろっときた。奈々にからかわれて、照れ笑いをしたような気がする。

そしてハバナ。
ハバナのホテルはすごかった!!@トイレに便座があるAお湯が出るBゴージャスな料理が白い皿にのって出る(食べ過ぎてお腹を壊した私。)CクーラーがあるDメイドさんがいる。「最初にこっちのホテルじゃなくてよかったねえー!!」と、みんな口を揃えて言っていた。
ハバナではみんな思い思いに過ごした。私も毎日いろんなところに出かけた。美術館、革命博物館、フリーマーケット、ビレーニアス(合ってる?)の谷、モロ要塞、郵便局、コッペリア、ハバナ大学、カテドラル、新市街などなど。自由だったなぁ・・。
日本人と知り合って響と三人でご飯を食べたこともあった。一人でピザ屋に入って不安な気持ちでピザを待ったり、おいしいカフェを見つけたり、アイスをだまされて買わされたり、フリマで買った絵を帰りの空港で失くしたり、空港のトイレでみんなで顔を洗ったり、もうカナダに着いたのに「グラシアス」とスッチーに言ってしまったり。
カナダのホテルでも、よこっちが時間になるとぴたっと起きて、もそもそ動き始めるのに感動したなぁ。よこっちがいなかったら、私は間違いなくお寝坊ナンバーワンだったはず。

キューバにはいろんなエネルギーがうずまいていて、私もちゃんとエネルギーを持っていないと弾き飛ばされそうだった、というのが、一番の感想かもしれない。ICAPで見たものとハバナで見たものとの折り合いをつけるのが難しかった。社会主義・資本主義、新しいもの・古いもの、いろんなものが混ざり合っていながらも、サルサや美しい海だけは変わらない、という印象を強く受けた。
今までの海外旅行の中で、一番勉強した旅だった。




● 佐能 由紀 ●

無事に日本に帰れてほっとひといきです。やっぱり日本はいい国だ。なんて住みやすいんだろう!・・・ということでキューバの感想ですが、一言で言うととにかく暑かった!です。いろいろあったけれど、終わってみればとても楽しい旅行だったと思います。
 まずキューバに着いて、ICAPの収容所みたいな宿泊施設にびっくりしました。あの2段ベッドも今ではいい思い出ですね。4個引っ付けることによってあんなたのしいことになるなんて〜。朝ごはんのパン、ハムじゃなくてバターだったらちょっぴりテンションがあがりましたね。農業、初回の草むしりはビーサンで行ったことを激しく後悔しました。たーくんに壊れたビーサンを4回くらい直してもらいました。ありがとう。でもそれ以外は畑とか好きなので意外とたのしく農作業できました。アリと蚊が嫌だったけど、普段出来ないことをするのはおもしろかったです。そのあとご飯モリモリ食べてシャワーをシャワーと浴びて木陰で涼んだりしました。あの時間はとてもきもちよくて好きでした。夜にはサルサを踊りまくったりしました。下手だけどすごくたのしくなって、いつもより余計に踊りました?。ICAPでの生活は、体調を崩す人続出だったけど私はとても健康で、ハバナにいるときより調子よかったです。健康的な生活。農家って素敵、でも大変。
 ハバナでは元大統領官邸というホテルに泊まって、向かいの店に毎日おやつを買いにいって、あんまり動かないという不健康な生活をしてしまいました。でも周りの人にくらべると私はとても健康でした。自由行動では美術館、革命博物館、モロ要塞、ハバナクラブ博物館などいろんなところに行きました。モロ要塞はとてもいいところ!海を眺めながらなぜか性教育の話で盛り上がったのもいい思い出です。街を歩いていると、チーナ、ハポンと呼び止められないことがありませんでした。サルサ踊ろうぜ〜的なナンパも多数。日本人ってなんてシャイな人種なのかしら、と思いました。
いろんな人の話を聞いたり、有機農業畑を見学したりしたのもいい勉強になりました。ICAPにいる間に聞いた話ではキューバってすごく良いんですよー、がんばってるんですよー、平等な関係で連帯してほしいんですよーみたいなことが多かったけど、実際ハバナに出てみると社会主義といえども明確な貧富の差があったり、有機農業だって広まるのかわからない気がして複雑でした。キューバのことをもっと深く知れるように、もっとスペイン語を勉強しておけばよかったあ、とよく思いました。現地のひとともっと会話がしたかったです。あと、なんか日本の文化活動?を、他国の人に披露出来る人間になりたいと思いました。キューバ人はみんな外国に行ったら、母国の踊りだって言ってサルサ踊れるんだな〜と思うととてもうらやましかったからです。
あとは、海が最高でした!!水が、水が、、とうめいなんだよお〜〜。さかな!がいたんだよ〜。あの海で夕日とか見れたらよかったな〜。ということで、キューバ大好きです。また行きたいです。




● 林 智子 ●―キューバダイエットに出会って―

もう、やみつき!効果テキメン、キュバダイアエット。20日ほど滞在するだけでこんなに・・・。痩せたんですよぉぉ〜!うぉぉ〜!!キューバごはん、ICAPの料理含め、そんなにだめじゃなかったんだけどなぁ。モリモリ食べてたし、モリモリ出してた・・・。ICAPのヨーグルトは本当に効いたよ。まあ、ダイエットはおいといて・・・。
キューバ上陸。今はあんまり思い出せないけど・・・すごく暑かった気がする。そして、行って早々びっくりすることも多かったねぇ。えっ、ここで寝るの?わぁお!みたいな。ワニとか。ハエロードとか。ゲイとか。農業は有機農業って聞いてたのに、ちょっと残念だったり・・・。雑草むしりよりオレンジの枝伐りの方が楽しかったけど、蚊に刺されすぎて失神しそうでした。あと、リンパ腺がなぜか腫れ・・・元気なのに救急車?にも乗ったなぁ。しかも、なぜ血採る!?それだけ?キューバの病院にも行き、医療現場を目の当たりにして、少し疑問。ICAPで聞くキューバ医療絶賛のお話とか。ラテンアメリカ医療学校の生徒さん、頑張ってほしいです。あの子たちならきっと祖国でいい仕事してくれるんじゃないかなぁ。同じ歳くらいとは思えなかったよ。
あと、ICAPにはいろいろな人たちがいたわね。キューバの人というよりはヨーロッパの人だったけど、こんなに近くで外国の人と生活する機会なんて滅多にない。特に、印象的だった結婚式。いろんな国の、全然知らない人たちがみんな心から祝福しているようだった。ふたりとも本当に幸せそうで、私もとっても嬉しかった!末永く・・・。
ICAPにいた10日間。最初は長く感じたけど、あっ!という間に終わってたなぁ。
キューバにいるという感じはそれほどしなかったものの、貴重な体験でした。英語話せるようになりたい!たーくん、人気者でかっこよかった。
そして、HABANAへ。私は、街全体が世界遺産という建築物の数々にうっとり。中でもカテドラル大聖堂はすごい!でも、何気ない路地の建物ひとつ取っても絵になってしまう訳です。あとは、モロ要塞ですね。上に登ると雲しか見えなくて、浮いてるみたい。ラピュタみたいだよ。風にあたりながら海を見て、この先にはアメリカがあるのかと思うと、何だか不思議な感じだった。アメリカとキューバ、この先どうなっていくのかな?旅に行くと必ず思うことは、自分の視野の狭さ。もう、何にも知らないんだもん!その国の歴史も、社会情勢とかも。でも、そういうことは本を読めばわかるけど、文化、人々、土地柄、臭い、話し言葉とかは行かなくちゃ感じることできないよね!だから楽しい。あ〜、次はどこに行こうまな。




● 伴 直子 ●

最初にわあっと思ったのはICAPに向かうバスの窓から見えた景色だった。青くて、雲も空も木も草も私が知っているものより全然大きくて、同じはずなのにもっとどっかまでつながってるんだなあって実感してしまう。そんな空だった。そんな始まりで、ICAPに着いたら自分の国を愛している人がたくさん働いていて、キューバはすばらしいってみんなが言っていて、果物がなっていて、夜は宴があって、必要以上のものはなくて、みんな優しくて、あまりに陽気な場所だったので「キューバってすごい国だな」と私は思った。社会主義って言葉でしか聞いたことはなかったけど、もしかしてイメージしていたよりすばらしいものなのかも?みんな幸せそうだよ?そう思ったのでした。でもICAPが国の設立した友好の家という場所とつながっていたり、他の国の国民にキューバを知ってもらうために作られた場所だと知って、ここは外国人に見せるために作られたキューバなのかもしれないなと気がついた。実際ハバナに移動した後もっと現実に近いキューバを見た気がした。社会主義は平等を唱っているのだけど、けしてそううまくはいっていなくて外資が入ってくるような観光地ではやはり貧富の差はあって、人はみな自分がかわいくてそこからバランスがくずれていってしまうのだ。それでも、キューバの大学を見学をしたときに出会った少女はきらきらしていて、人のために働きたい、国のために一生懸命勉強すると言った。ICAPで働いている農家のおじさんも、ナースのおばさんも、監視員の人もみんな自分の国を愛していて幸せそうに見えた。そういう人達にそれでいいの?と、資本主義はすばらしいんだとか言ったり、否定したりできないんじゃないかと私は思った。その人たちにはみんな信じているものがある。日本にはないものだ、日本じゃ宗教も他人も国も信じたりしていないのではないか。みんなが社会の仕組みの中でどんどん個人主義になっていく。国のために働くことが良いというわけではないけど、自分の存在意義とか働く意味とか、そういうものがないと人はだめなんじゃないかなと思う。少なくとも自分だけのためではなくて。へんな文章になってしました。キューバの夕日と朝日は空がおっきいだけあってすごくきれい。特にハバナのモロ要塞の見える海沿いから見える夕日はすごく気に入って何回も行った。キューバでそうやってぼうっと過ごしている時、今日本は朝で私をぬかして、私のいるべき場所では、いつもの人々がいつもの生活をしてるんだなあって考えた。こうやって、自分の帰るべき場所を確認したり、日本という国を客観的に見ることができるようになるのかなと思った。